全日本コーヒー商工組合連合会

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2016.03.31

インタビュー特集①全国に広がれ!絵画コンクールの輪を公開

全日本コーヒー商工組合連合会

コンクールを開催した経緯について

永島: 今回この取材を受けたのは、自分なりにとても良い企画だと思い、「他の組合員各社さんもやったほうがいいよ。凄く良いから」と伝えたかったから。 本当の取材対象は俺じゃないんだよ。このコンクールをやって喜んでくれた子どもとお母さんたちが主役なわけで、そんな感動があったから皆さんに見てもらったのね。

絵を描くのが好きな子供だった

永島:家が商売をやっていたから、親にかまってもらえなかった。集めておいたチラシの裏に、クレヨンで一日中絵を描いて遊んでいた子どもだった。 小学校の時には、いろいろなコンクールにも入選して、母親に百貨店に展示された自分の絵を観に連れていってもらった記憶がある。

でも、いまは企業が不景気でコンクール自体無くなってきているんです。最近も、ある児童絵画のコンクールを手伝ったが、 「予算がない」という理由で翌年にはすぐ無くなってしまった。こうした企画は減る一方で「宇都宮の小学生はかわいそうだな」と感じていた。

教育学部を出て心に「先生になりたい」という原点があったから、多少でも社会貢献を多少でもしなければと感じており、自分のできることは何だろうと見回すと、それがコンクールだった。

「いつか自分ができる範囲でやろう」というのが、ずっとアタマの隅に残っていた。

包装の技術がようやく時代に追いついた

永島:元々、すごい勢いで進化するITの世界で働いていたので、従来のドリップバッグの包装には不満があった。 フィルムを小袋にすると、ものすごい数なんだよ。 1000mを10巻とかが最低のロット。それも絵柄は全部同じだからね。

パソコンで一枚一枚年賀状を印刷できる時代になったのに、大手のパッケージメーカーはなぜできないんだ?と思っていた。機械自体の開発は可能らしい。 ただ、とても高価なので設備投資が大変で出来ないと。 全国のメーカーに問い合わせました。色々な提案をされたけど、2013年にSというメーカーがこのドリップバッグのサンプルを持ってやってきた。

これは、ありがたいよ。発注単位が500個なの。これで初めて使うことにした。 単価の問題もあるけれど、発展性があることが重要だった。 一色増えるごとに幾らという単価設定も時流に合わない。 だから、これができた時「やっと時代に追いついた」と感じた。コーヒーで使うのは日本初だとメーカーが言っていた。

畔柳:それで、Webでも紹介されている、あのユニークなパッケージが出来上がったのですね。

永島:その試作がこれです。お金はかかるんだけどトライすることは大事だよ 。手描き風のウサギにしたのは、俺が卯年だから(笑)。 どう見てもクダラナイでしょ。普通だったら『ブラジルコーヒー商会』ってロゴの入ったパッケージなんか作ると思うんだけど、そんなのつまらない。 自分たちは満足するんだろうけれど、もらった方はどうでもいいでしょう。楽しい方が絶対にいい。固く作っちゃダメなんだよね。

畔柳:なるほど。良いと思う人もいれば、全然ダメと感じる人もいるかもしれませんが、変化というかニュースと楽しさがありますね。

永島:ちょうどこの頃、大規模なコーヒーイベントがあって、S社のサンプルとして300個あげたんだよ。 他のも含めてメーカーのブースに全部展示して、客が持ち帰ったのはほとんどがウチのデザインだった。 Webだってカッコつけただけのホームページなんて誰も見てくれないでしょ。別に見る方はデザインがかっこいいから見ているわけじゃない。

それから、営業にもたせて「どうなんだろう?」と反応を聞いてみた。するとお客は「これ好き。あれは好き」なんていう感想がポンポン出るらしい。 無難に作ってたら、そんな意見すら出てこない。

ハードルを低くすれば仕事がやってくる

永島:ブラジルコーヒー商会の営業は、全員ラテアートが描けるけど、別にカッコつけさせるためじゃない。 いつもは豆を届けるだけと思われている営業が、ササっと簡単なリーフぐらい描けたりすると、それを見ていたお客様が「おめができるぐらいなら、この機械買うぞ」って話になる。その意外性が武器になるんです。

パッケージも同じで、「こどもの絵が商品になるのなら、ウチの店で自分が描いた絵でも」と買いたくなる。ハードルを低くすることが大切。ハードルを低くすると仕事ってやってくるの。

いよいよ50周年記念コンクール開催へ

永島: このパッケージの話は、2013年10月に地元の下野(しもつけ)新聞さんが「面白いことをするコーヒー屋がいる」と記事にしてくれた。

そして今回、当社の創業50周年ということで、一緒にコンクールをやりましょう。と言ってくれたので協賛になったんです。

企画の内容はこちら側で考えて、チラシを2万5千枚刷り、下野新聞さんが栃木県下の学校に一斉に配ってくれた。ほかに、ウチのお客さんにもチラシを置いてもらって。 すると、「ブラジルコーヒーさん、こんなこと始めたの」って驚く。 下野新聞さんは、この手のコンクールを時々開催するけど、社員20人の企業が協賛すると聞いて、客も皆ビックリしたらしい。

畔柳:絵はどのぐらい集まったんですか?

永島:応募総数68点。選考会では涙が出たよ。みんな一生懸命描いてくれているのが伝わってきて、こんな嬉しいことはなく感動しました。

コンクールに対する反応

永島:表彰式で箱詰めした30個のコーヒーを副賞で渡したときの親の顔が印象的だった。「やった!」と思ったもん。 子どもはきょとんとしていたけれど、後ろで見ていたお母さん方の顔は、「自分の子どもの絵がちゃんとした商品になって渡されたときの」驚きの顔だった。 今日も、「何個買わせてください*」というお客さんもいて、歳暮で親族に配るというお母さんばかり。 お子さんがいる家庭は、自分の子どもの事のように喜んでくれている。 (* 一般への小売りは行っていません)

畔柳:ご商売には貢献しましたか

永島:もちろん厳しいよ。でも、ちょっと先を読んで次に展開しないと(小声で)会社は維持できないよ。 下野新聞さんは「入選作品の絵が商品になるのは、かつてなかった」と言ってたけれど、これはボランティアではなくて、きちんと回収できるように考えた結果。 コーヒーを売るだけでなく、知恵を絞ることが大切。

全国で先生になっている同級生たちも「夏休みに宿題にして出させようか」と言ってくれたんだけど、コンクールの対象が栃木県限定ということもあって、 それぞれの地域でやってくれるロースターさんがいればいいなと思っている。いろんな形でコーヒー業界全体が話題になれば、少しは違うじゃない。

自らコーヒー講師を無料で引き受ける

永島:あとね、5年ぐらい前から、夏などに集中して何校か専門学校で教えています。宇都宮・小山・足利。コーヒーは買ってもらうけれど、ボランティアで。
無償で講師を引き受けた理由は、まず元々、先生になりたかったから。人に教えるというチャンスを与えてくれたから。生きがいのひとつだから有り難いですと。 もうひとつの理由は、教えた子どもたちが就職や店を持ったときに、俺のことを憶えてくれるかもしれないから。これは10年後のための営業活動ともいえる。

畔柳:それはわかるけど、そう言えちゃうのが凄いですね。

将来の顧客づくり

永島:実際、うちの営業が客先を回ると、「おたくの永島社長に息子が習った」という店も多い。例えば、最初に算数を教えてくれた人って印象に残るじゃん。 特に大人になるとね。パソコンでもコーヒーでも一番最初に教えてくれた人のことを憶えている。

だから、これが私なりの営業活動なんです。講義の最後には「いまはこうして先生やっているけど、お店を開くときは、先生のところのコーヒーお願いね」って。もちろん冗談ぽくだよ(笑)

最初の20分で人間関係を構築するために

永島: 俺の講義はだいたい3日間なんだけど、はじめは「どっかの先生が来た」という感じで人間関係ができない。だから、長くしゃべらずに即焙煎から始めます。

調理科とかパテシエ科とかフライパンは平気な子達だから、「じゃ、火をつけて。豆煎って。火加減は先生が見るから」って、 火加減を見て回るわけ。はじめから細かいこと言われて、じっと聞いていたって面白くもなんともないからね。

グループをひとつずつ、「おねーちゃんのとこはこうだよ」と、話しながら回ると、豆っ子焦がさないようにと皆真剣だから、 生徒との人間関係が最初の20分で出来上がる。そのあとからドリップの話とか詳しい話をしても真剣に聞くようになるわけ。

若い子と仲良くなる方法は、相手のところに入っていく。それを長々と話していたりすると、子供たちは、だんだんあくびをし出す。 「あー、この先生なんか偉そうに話しているけど、今日は何をするんだろう」って。

3日間で焙煎からはじめて、ドリップ、フレンチプレス、ネルドリップ、アイスコーヒー、産地別のコーヒーもブルーマウンテンNo.1から すべて生豆を持ち込んで時間の許す限り徹底してやるの。

あとは、お客さんの子や他社のお客さんの息子さんや娘さんもいて、「お店やってんです。 でも他社さんの豆なんです」とかあって「じゃ、お父さんに言ってよ。今度、先生のところからも取ってよねって(笑)」

一番伝えたいのは心

永島: 生徒が6グループあってさ、同じ豆を同じように挽いてドリップさせても、同じ味にならないんだよ。 落とす人間によって味が違う。 いろいろな機械操作や抽出方法もあるけど、最終的に大切なのは心だからさ。お茶でも何でも日本人は最終的には心だから。格好つけだけじゃお客さんは残らないから。

「コーヒーを美味しく出そうという気持ちがなくちゃ、お店は長続きしないよ」って言うの。 ボタン一つのマシンで抽出していても、そこそこ店はやっていけるだろうけど、本当にコーヒーのことを知りたければ、やはりそこは気持ちだから。

「わかるだろ?そこのふざけているグループの奴ら。豆がいいから不味くはならないけれど、ふざけたニイちゃん達のコーヒーは味がブレてるだろ。 お前ら、そのまま店やったら絶対潰すからな」って名指しで言う。

結局、最終的に何を教えるかというと、コーヒーを淹れながら基本的な接客業のやりかたを教えるのね。 機械や方法も覚える必要はあるだろうけど、ほどほどの豆を買っていて、メモを見返せばなんとかなる。偉そうに、落とし方をどうのこうの言う以前に気持ちが有るか無いかだから。

永島 一正 氏有限会社ブラジルコーヒー商会 代表取締役社長

学生時代、小学校教諭を目指し、教育学部で美術を専攻して教員免許を取得。 コンピューター企業に就職し、大手コンビニチェーンを担当して32歳に独立。当時はWindows95が登場した直後。 以降の10年間、激動するITの世界に浸るも、ライブドア社との仕事を最期にブラジルコーヒー商会を継ぐことに。 現在は、実弟の営業部長と二人三脚で、昔ながらの栃木のコーヒー文化を守る52歳。

有限会社ブラジルコーヒー商会

〒320-0021 栃木県宇都宮市東塙田1-13-2
TEL:028-622-0661
FAX:028-622-0939
営業時間:9:00~18:00
定休日:土・日曜・祝日

<インタビューした人>

畔柳 一夫(くろやなぎ かずお)

永島社長とは以前挨拶をして以来、今回の取材を通してはじめてゆっくりとお話をさせて頂きました。 インタビュー中に出てきた言葉で「ハードルを下げる」「お客様目線で物を見る」など 常にお客様が喜ぶこと、楽しくなること、 美味しいと感じてもらうこと、などを考えており 見栄や飾りのない実直な人柄と向上心とパワーが印象的でした。 人を大事にすることの積み重ねで、 栃木県を中心とした所謂、地域密着を実践されており、大変興味深いお話を聞かせて頂きました。

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